2003年3月30日 帰国前夜の友達が 突然家に来る

この夜、同級生だった友達から電話がかかってきた。3月23日の日記でも書いた、帰国が迫った韓国人のクラスメイトからだ。
卒業して半年以上が経ち、各国から来ていたクラスメイト達は 卒業のカリキュラムの一環として学校が定めた半年間のインターン(スタージュ)を終え、それぞれの場所に戻る決断の時期を迎えていた。
一人、そしてもう一人とパリを去っていく・・・


私、日本では10年前に持って以来、携帯に隷属して 人との綱がりで生きてきた人間だけれど パリに来てからは100%自分だけの時間を過ごしたくって 携帯も最後の最後まで持たなかった。そして 家の電話も 外から帰宅すると直ぐにネットに繋いでしまって 電話がかかって来ない環境にしてしまっていた。(方々から 「いっつも電話中で連絡が取れない!!!」と文句を言われていたものです・・・アハハ・・・)
そんな環境で ネットに繋いでいないちょっとの合間に偶然、ほんと偶然彼女からの電話。

「部屋の物、全て無くなったわ。明朝 エタデリューなの。明日、パリを発つけれど、今、一人で寂しい。ねえ、これから行ってもいい?」
「日曜日だからスーパーも閉まってて何も用意できないけれど おいで、おいで」、と二つ返事で彼女にいう。

彼女の住まいは 家からメトロで4駅、高級住宅地。彼女の家でのパーティーの時には そのアパートの広さにビックリ。一人でこの住まい・・・という感じ。私の同学年の韓国人留学生は 皆、育ちの良さが滲み出ていた。彼女もそう。

小一時間たって ベルが鳴る。
「私よ。」
私はカチンとドアを開錠して彼女がエレベーターで上がってくるのを待つ。

「サリュー(やあ)!!」と空元気でやって来た。
ビズを4回して 家に招き入れると 手土産に綺麗なバラの花束を彼女は私にくれた。流石、スマートな事を最後までしてくれるわ☆と思ったと同時に、「ごめん、トイレかして」と彼女、駆けつけトイレ☆どうやら 我慢していたらしい・・・

それから 夜中まで 二人で話し、お酒を飲んだ。

彼女ほど クラスの中で色っぽかった人は居ない。
黒く艶々な長い髪。キリリとひかれたアイライン、そこから放たれる強く、力の有る視線。綺麗に整った顔立ち、本当に美しかった。人に物を尋ねる時には 細い首を傾け、腰のある髪が真っ直ぐ垂れ、上目遣いで真っ直ぐ見られて・・女の私でも「いや〜ん、綺麗な人だわ☆」と感じた人。そんな “お姉さま”(三十いくつだったかな、彼女。なにせフランスってば、歳を全く気にしないお国柄で・・・)にゾッコンになってしまったフランス人の若干20歳の同級生(男)も居たっけ・・・

ずっと机を並べてきた彼女。気の強い彼女が、その夜はナイーヴ。帰国を翌日に控えて すごく揺らいでいた。

酒飲みの私の家には 色々なお酒が有って それらをジュース、育てていたフレッシュなミントなども入れて 幾つかのマドラーでそれぞれ混ぜて彼女に出した。そのマドラーに彼女は反応。
「かわいい〜」
それらのマドラーは日本の竹細工で、親が送ってくれた物だった。だけれど、そういう彼女にあげたくて。「もし良かったら、あげるよ。」というと すごく嬉しそうに「ほんと?ほんと?うれしいー!!!一生大切にするわ!!!」と言っていた。
最後の方はかなり酔っていたけれど、いざ帰る時には しっかりマドラーを握り締めて「ありがとう!」と帰っていった。

翌日、私は仕事で見送りに行けなかったけれど、見送りに行った友達の話では 大泣きしていたらしい。
そして 帰国者に良くある事、(私もだったけれど)荷物が収まりきらなくって、それでも空港にもって行ってしまい、結局荷物を解体して 車で見送りに行った友達がパリに持って帰ったとの事。(私は空港に捨てたけれど・・・)

まあ、そんな ちょっと切ない、友との別れ前夜でした。