2003年7月9日 パリ オートクチュール コレクション(当時のおフランス日記より)

昨日(7月8日)帰ってきてみると留守電有り。
聞いてみると郵便局からで
なんと、とうとうやりました。
不渡り小切手☆ウフッ♪

残金が少ない事は判っていて、
お金を銀行から移さなきゃ、移さなきゃ、と思いつつ、
残業が続いて 行く暇が無く、
とうとう私も やっちまいましたよ、はい・・・

といっても
そこまで深刻にはならないのが
フランス生活5年目なのでしょうか・・・

はたまた、
こんな国だけあって
周りに何人も不渡りを出して
1,2ヶ月口座がつかえなくなっちゃった人が結構居るし、(日本人なのにぃ)
いい加減なフランス人の生活する、ラテンのこの国で
1回不渡りを出したぐらいで 何にもならないだろう、位の変な余裕というか、
変なフランス観が身についてしまっているからでしょうか・・・

まあ、そんな事はさておき。



今日、7月9日(水)は○○(自分の仕事先)の
2003、2004 秋冬オートクチュールコレクションでした。

会場は凱旋門から歩いて5分足らず、THEATRE D’EMPIRE。
日本語で言うと帝国劇場という感じですかね、ハイ。
(実際に行ってみたら 日本の日比谷の帝国劇場とは雲泥の差。
昔、李香蘭を観る為に何重もの、すごい列が出来た、
そんな由緒ある劇場とはかなり違う、というか・・・)

パリのは“市民ホール”的なノリ、とでも言いましょうか・・・
地方で、日曜お昼“NHK 喉自慢大会”やっていそうな感じ、というか。

とはいえ、
会場の廊下やロビーには 有名な俳優と思われる
写真がズラリ、飾ってありましたよ。
私の感じ方とは裏腹に何気に すごい会場だったりして?!

さて 今回はそんな会場でのショー。
私は今回もフィッター(モデルに服を着せる人)をしました。

  
メイク中。壁には 俳優の写真が多々飾られている。
 
メイク後。モデル同士雑談中。カメラが向くと もちろんポーズ☆

最初、私はJAQUIETTA(ジャキエッタ)の担当になり、
きゃ〜〜〜〜〜〜っ まじでぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(嬉)って感じでした。
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少し前の日記にも書いたかもしれないけれど
先の戦争の影響で 前回のコレクションのオーダーがほとんど入らず、
今回のコレクションは背水の陣、という感じでして。

服はもちろんの事、
今日、会場に行ってみると、
今まで以上に数多くの世界のトップモデルを何人も起用している事に
その意気込みのすごさを感じつつ。

ジャッキエッタは前回も居たけれど
今回、来ていた世界のトップモデルの一部を挙げると−−−

*ジャキエッタ
彼女、例えるなら、「小鹿ちゃん」
あの足の長さ、
ノミのように スンゴイ高さ跳びそう。
ブブカより遥か、高く高く、跳びそう!
そんな、超人的な脚力を持っていそう、そんなモデル。

トップモデルを見ていつも思うけれど
同じ人間とは思えない。
彼女、色々なブランドの広告に出ているけれど
この間、(1月〜2月)日本に帰った時、
銀座の中央通りに すさまじく大きな広告のモデルとして起用されていて
多くの人の目にさらされていたはずです、日本でも。
 
(リハーサル直後のジャキエッタ。シャンパンを飲んで 待つ。)

*ステラ
彼女、ホント有名!
世界的に有名なブランドの顔である、広告のモデルをしている。
彼女、故 元ダイアナ妃と親戚関係にあるらしい、
なるほど
似ているところがある気がする。
余談だが、
私は彼女が大好きで 彼女が出ている雑誌を見つけるとスクラップしている。
ステラ、かっくいい〜!
本当に、ね、
目に力があって、存在感があって、惹かれます。
あー、言っておきますが、私は同性愛者ではないです☆
 
(バックステージ入りするステラ と 本番直前ステラ)

*ヘレナ(フランスではエレナ)
彼女も有名すぎて・・・
トップ中のトップ。
最近だと、何に出ているかな…
兎に角よくでているとおもいます。

今回、会場で彼女と話をしていたのは大御所ステラぐらい。
そんなモデルの中に居ても
さらに、スゴイ オーラ+ランクのある人。
今回の彼女の起用には 裏話が有って、後日社員から聞いた所によると 出演する為に提示した彼女の条件が、さすが“大御所”で、すごいギャラが発生したらしい。

(ヘレナの目はすごいらしい。たけしの アンビリバボーで ヘレナの7色に変わる虹彩が昔取り上げられた事有り。周りの色によって彼女の瞳は色を変えるらしい)

*ナターリア
多分、
今、(2003年)
世界のモデルの中のトップ中のトップ。
旬が短い、モデル業界で 今が、正に旬のモデル。
今回のクリスチャンラクロワのウェディングドレス
(ウェディングドレスはショーの大取)を着ていたその人です。
他のサイボーグみたいで無機的なモデルと比べると 割と小ぶりで 肉感的な感じ。
 
(リハーサルからかえって来たところ。カメラに気付いてポーズをとってくれた☆)

そりゃ、
12時本番、9時半集まりの裏方の私たちと同じ時刻に来るモデルとは
全然ちがいますよ、ほんと。
ジャキエッタより、
ステラより
ヘレナよりも、
更に遅い、
重役出勤ですわ、はい。
(人気モデル程 引っ張りだこ。だから1日でいくつものメゾンのショーをハシゴする。彼女らの到着、メイクを待ってショーは始まるわけで。だから ショーは遅い時間になればなる程 開始予定時刻がどんどんずれ込んでいくぅ〜。そして ショーが遅れて始まるのは常な訳です)

この間も フランスのファッション番組で
彼女を崇拝する様な 新人モデルの番組をやっていたぐらい。
今、飛ぶ鳥を落とす勢いの、すごいモデルです。
童顔なくせして 
ビックリクリクリ クリックリ!
子供 居るとの事。
余談になるけれど
何年か前にもスーパーモデルのトリッシュが子供を産んだ時には
「ま、ま、ま、∽・・・まじでぇ〜」
と腰を抜かした。

やっぱり、世界のトップの、華やかなそういう世界って
お盛んなんでしょうか?

まあ、
それ以外にも
沢山、VOGUEなどの雑誌でよく見かける、
超有名なモデルが その場に ゴロゴロ居たわけです。
 エリーズ クロンベも。
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ジャキエッタの準備していた私でしたが
直前リハーサルの後、
突如、チーフから
「マリエ(ウェディング)の方を着せて。今の担当は交代して。」といわれました。

ジャキエッタで すごい興奮していた私としては
ウェディングを指名でやらせてもらえる事に なんだか、○喜。

超有名モデルには3着。
普通のモデルには2着。

ウェディングのモデルは2着。
でも、すごい力の入った、2着!
だから3着ではなく、余裕を考えて2着。

それを、チーフと一緒に、やらせてもらえる事、それって、
すごく
うれしぃぃぃぃぃ〜
リハーサルにて。最後の立ち位置。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

今回で ○○(自分の仕事先)のオートクチュールのショーは3回目だけれど
それだけに、色々見えたところも有って
もろ感情移入してしまいました。

丸1年、○○(自分の仕事先)でやってきて、
去年はわからなかった、社員のボヤキ。衝突・・・

そんな、アトリエでの日常を毎日みていただけに、
今回は 色々感じる事が多くって。

ショーが近づくにつれての 緊張感の昂ぶり、
リハーサルでボスに駄目出しされたドレス、
最後までチーフと衝突しながら進めていく作業・・・

何と言うか、
私の今までの人生で、
似た感覚をあえて探せば、それは、多分、
文化祭の前日。


みんなで 同じ目標に向かっていく!
クラスのみんなと、学級会を重ねて
意見を洗練させて、
その日だけ、
それだけの為に
全身全霊でのぞむ。

そんな、感じ。そう強く感じました。

私は 無責任な立場だから
こう感じてしまうのかもしれないけれど
○○(自分の仕事先)的には
前回の不振を挽回する為に色々、大変なんでしょう・・・

これからオーダーが入ったり、
○○的には 今シーズンはこれからなんだろうけれど
(と、言いつつ、オートクチュールは8月丸々ヴァカンスで閉めちゃうからスゴイ。
顧客もヴァカンスに行っちゃって
9月末、10月までオーダーに来ないって言う、そんなハイソな生活をしている人たちだから、ってのもあるけど・・・)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

なんだか、私の感情が、
が〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜って、移入しちゃって。
リハーサルの音楽を、バックステージで聞いた時、
涙が、
涙、
が・・・
私としたことが!
物心ついた頃、
多分、
幼稚園の頃から、
人前では絶対に涙を見せまいと 
気の強さ全開で生きてきたのに、
それなのに、
涙が、
ガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
って、
出そうになってしまって・・・・・・・・

不覚。
というのか。

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今回のショー、
本当に体で 感じてしまう、すごいショーだったと思う。

個人的な感情も相俟った、
そういってしまえば おしまいだけれど、
それ以上に
魔物的な、感覚って言うのかな、
オートクチュールの世界、
世界中のたった200人、300人の顧客に向けた(もっと少ないという話も有る)
それだけの 発信。
贅を尽くした作品。

それだけの為に真剣に 企業が打ち込む。
アトリエのおばちゃんたち、
日本の、50歳、60歳のおばちゃんが、
絶対に口にしないような、
「ざぁ〜けんな!!!」
「くそっっっっっ」
「むかつくっっっっっっ!!!!!!!!!!」

そんな悪態を
ここ最近、加速度的に激しく、
独り言で言いつつ、
伝統的な最高の技術で、最高のドレスを縫っていました。

そんな、
そんな積み重ねの感情もあって
今日、
リハーサルの時も然り、
その後、
本番の時も、何度も、何度も涙が溢れそうになる瞬間がありました。
そのたび、我慢して。


極めつけ。


私がこの1年
働いていた部門の3人のチーフのうちの一人。
彼女が。

今回の、後がないって言う、
いつも以上に緊張感のあるショーに
今日、朝から胃を痛めて辛そうにしていたんだけれど、
ショーの直前、
私にぎゅ〜〜〜〜〜〜っと抱きついて。
「あなたはすごくいい仕事をしてくれたわ!!!有難う!」と
耳元で言われた時、
本当に涙が、まぶたのキャパをこえそうになりました。

彼女、緊張感で胃を痛めている時に
たかが こんな私に対して そう言ってくれたのが、
私は 本当に嬉しかった。

涙は 何度もキャパを超えそうになったけれど
我慢。我慢。
何とか、乗り切りました。

やっぱり、パリコレ
ましてや
オートクチュールは すごい・・・・・・・・・・・・・・

今日の一部始終を述べるのは不可能で、
あれは
あの場にいて
直接、音、像、感覚、
いろんな刺激を与えてもらった人しか
正確に伝わらないような・・・

ほんと、感激。
その一言につきます。

そして
今回、一つの作品を丸々縫わせてもらえたのが、
更に感情移入をする結果になったのかもしれません。

一番偉いチーフに
「これはa--------aにやらせましょう」って言ってくれた時は
この1年の私の仕事が報われた感じで、
嬉しくて涙が出るかとおもいました。


正午スタートのショーも
“ショーのお約束、40から50分遅れる”
そのロジックそのまんま、
遅れて始まり、ショーは滞りなく運び。

1時半頃、フィッターとしての後片付けも終了。

世界からのジャーナリストが ボス(デザイナー)を囲んで色々質問をしていて
私も
しばし そのハイな空気を吸っていたかったけれど
残念ながら 昨日の不渡りの小切手の後処理の為
急いで動かなくてはならなくってぇぇぇぇぇ!!!

まあ、しかたが無いですね。

やっぱり、オートクチュール
“魔”というか、
吸い込まれてしまう、というか
飲み込まれてしまう、というか、何か、すごい、物をかんじます。
パリコレは 麻薬です。(やったことないけれど。)